Bob Summers / Second Coming Of The Bob Summers Revival

Hi-Fi-Record2010-08-10

The Cool School 198 史上最大のディスカウント その3


目標額に達したら半額にするぞという
店主の約束を信じて
その店でのぼくたちの買付は続いた。


書きながら思い出したが
最初は
店主の言ったことがうまく伝わっていなくて
ぼくたちは本来の目標の半分で
半額になるのだと思い込んでいたのだった。


実際に買わなくてはいけないのはその倍。
それに気がついたときには
冷汗とアドレナリンが同時に出た。


そして
外がくらくなりはじめたころだった。
この1枚でどうやら目標額を超えたという手応えを得た。


「たぶん、超えました!」
「よし!」


それを合図に
店主の立つカウンターに一斉にレコードを運び込んだ。
下手に途中経過を知らせず
一気に勝負をつける。
それがぼくたちの戦術だった。


ぼくたちの戦利品を箱に詰めながら
店主は丁寧に計算を続け
そしていよいよ目標ラインを越えそうに……、
越えるか……
越えれば……
越えるとき……
越えた!


「You got it!」


大江田さんがパン!と思わず手を叩く。
ぼくは店主と控えめにハイタッチ。
これだけの量を本当に買われると思っていなかったのか
それとも大量にレコードが売れてそれなりにうれしいのか
眼鏡の奥の店主の心中はよくわからなかったが
とにかくぼくたちは勝利を手にしたのだった。


「来年もまたやるかい?」


店主が神妙な半笑いを浮かべながら言った。
この店の商品の回転は
そんなに速くないことを
ぼくたちは知っている。
来年も、ここでこれだけ買うのは無理だろう。
もちろんそう言っている彼自身も
そんなことは重々承知なのだ。


でも
ぼくたちがまたいつかトライすると言えば
彼もまたがんばって仕事をするかもしれない。
すべてのレコード屋には
元気でいてほしいのだ。


だからこう返事した。
「また今度、いつかね!」


こうして
ハイファイ史上最大のディスカウント作戦は
無事に大成功に終わった。(この項おわり)


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ボブ・サマーズという風変わりな音楽家のこと。


マイク・カーブの下で
コーラスやサウンドの多重録音を担当し
自身のソロ・アルバムも
かなりキテレツなポップ感覚で染め上げられたものになっている。


最近気がついたのだが
彼はあのボビー・サマーズと同一人物ではないのだろうか。


あの、って、どの?


それはレス・ポールの相方だったメリー・フォードの実弟のこと。


メリー・フォードの本名は
アイリス・コリーン・サマーズという。
そして弟のボビーは
姉についてレス・ポールのスタジオに出入りし、
彼の工学的な録音システムを目の当たりにしていたのだとも聞く。


レス・ポールと袂を分かってからのメリーのレコーディングは
弟ボビーによるレス・ポール風のアレンジが施されているのだと
デザイナーの岡田崇さんに教わったことがある。


でもつい最近まで
そのボビー・サマーズと
このボブ・サマーズが
同一人物だとは思っていなかったんだよな。


この件、
もうすこし調べてみます。(松永良平


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