Darling And Street ダーリン&ストリート / Home
ハイファイのリストを見ていて、「ふたりのポップセンスが爆発した傑作アルバム「Possible Dream」(見つかりにくくなってきました)に収録の一曲」と書かれているのを見て、「見つかりにくくなってきました」のところで、ああ、その通りだなあと思った。そして急にアルバムを聴きたくなって引っ張り出した。
ダーリン&ストリートとは、エリック・ダーリンとパトリシア・ストリートによるフォーキーでポップなデュオ。
二人の唯一のアルバム「Possible Dream」は、2001年にヴァンガードのアルバム10点をがCD化されたうちの一枚として、キングから世界初CD化発売されている。選盤、ライナーなど、ボクはこの時のスタッフに加わっていた。ライナーはエリック・ダーリンと個人的な親交を持ち、エリックの唯一の来日ライヴを企画し招聘した山田さんに書いていただいた。
それを読み返すと、山田さんがエリックと過ごした日本での数日の日々のなかで彼の口から聴いたことはもちろん、おそらくはパトリシア・ストリートからもらったメールの返信がライナーに反映されていて、今こうして読み返しても実に楽しかった。
パトリシアがどれほどにエリックの音楽を愛していたのかが伝わってくると同時に、かつて全米1位のヒットを2曲も放ったエリックにとって、ヒットから遠ざかっていく毎日の苦悩が、どれほどに深かったのかも読み取れることができる。
そしてアルバムを聴きながら思いついたのだが、エリックがルーフトップ・シンガーズにおいて放った全米1位のヒット曲「ウォーク・ライト・イン」と、この「Possible Dream」というアルバム・タイトルが響き合っているのではないかということだ。簡単にいえば、ニュアンスは違えども、彼は同じことを言いたかった、想いは連なっていたのではないかということだ。
エリック・ダーリンは、ライヴのステージで「Home」の喪失がアメリカの不幸せを生んでいると語っていた。ポツン、ポツンとした訥々とした語り口だった。古くからのフォーク・ソングには、「Home」が生きているとも語っていた。
エリックは2008年の8月3日にこの世を去った。
これまで何人かの音楽家と会って話をしたことがあるが、もしかすると亡くなったのはエリックだけかもしれない。(大江田信)
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