The Mugwumps マグワンプス / An Historic Recording

Hi-Fi-Record2011-02-13

 マグワンプスは、ザル・ヤノフスキー、キャス・エリオット、デニー・ドハティ、ジム・ヘンドリックスによるグループ。


 後にママス&パパスやラヴィン・スプーンフルを結成し、成功を手にするメンバー達が在籍している。マグワンプスそれ自身としては、確たる成功は得られていない。となるとママス&パパスやラヴィン・スプーンフルの前哨戦として聞き取られるべき音源となるのだろう。


 それはそうとわかった上で、ボクはママ・キャスの初期キャリアとして、このアルバムを聴く。
 無邪気で気の良い女の子を演じる彼女が、実は傷つきやすい心の持ち主だったことは、彼女の道のりを追いかけてみると、ほどなく見えてくることだ。ママ・キャスの名前を嫌っていたというのも、素直にうなずける。大柄な彼女に"ママ"のニックネームを与えたのは、マネージメントだった。

 
 マグワンプス時代の彼女は、ジム・ヘンドリックスと結婚していた。しかしそれはジムをベトナムに送らないための方便であり、実際には婚姻生活はなかったとされる。彼との結婚は、1968年に無効となる。
 その前年、1967年に、彼女は一人娘を産んだ。父親が誰なのか、彼女は決して口外しなかった。
 1974年に、公演先のロンドンのホテルでキャスが客死した後、一人娘は、キャスの妹、レア・カンケルと、夫のラス・カンケルが引き取って育てた。


 無邪気に楽しげに振る舞うキャス。そして歌声。キャス・エリットには、そうした姿が求められた。
 バブリックなイメージとしてキャス・エリットと、本名エレン・ナオミ・コーヘンとして生きる女性との間には、たぶん深いミゾが刻まれていったに違いない。


 マグワンプスのこのアルバムでは、彼女の音楽が全開と言うにはほど遠いが、明るいキャラクターの声が、音楽に決定的な色合いを加えている。
 嬉しそうに振る舞う彼女の姿が、裏ジャケットの一連の写真に写っている。(大江田信)


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