Dave Lewis / Little Green Thing

Hi-Fi-Record2006-06-13

WWEの日本人レスラーTAJIRIが、
WWE在籍時の日記的な雑感をまとめた単行本『TAJIRIWWE放浪記』を読み終えた。


全米一、いや、世界一のプロレス団体WWEに4年間所属し、
中堅ながらヒネリの効いたキャラクターで世界的な人気者となったTAJIRIは、
熊本県出身で、ぼくの2歳下。
だからというわけではないが、以前からシンパシーがある。


それに、過ごした人生は全然違うとはいえ、
彼が飛行機や車で全米や世界中をせかせか移動してまわるさまは、
なんとなくぼくたちの買付とも重なる部分がある。
知っている地名もバンバン出てくる。
だから、試合と試合の間の移動距離が、常人には考えられないこともよくわかる。
ハードな移動(時間も距離も)の中で彼が見つめる人間関係の機微を、
自身のプロレス・スタイルよろしく、TAJIRIはテンポよく文章にとらえている。
もちろん、WWEのファンであれば、いろんなレスラーの素顔が垣間見えるのも興味深かったりするのだけど…。


とにかく、アメリカのプロレスだけでなく、アメリカという国に興味がある人は是非ご一読を。
けっこうワサビの利いた文化論にもなっているので。


で、選んでいるレコードは西海岸のオルガン奏者が初期のA&Mに残した一枚。
メチャクチャかっこいい「Around The World」をTAJIRIに捧げたいのだ。


では、買付日記のつづきを。

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○月○日 3日目 晴れ


大江田さんが朝なかなか起きてこない。
しびれを切らして声をかけるのだが、寝返りを打ちながら「むーん、むーん」と鈍い反応。


時差ぼけの疲れが朝方に回っているのだ(たいてい原因は二度寝)。


一時間ほど待つ間に、ちょっとしたいたずら心が発生。
たまたま私用で持ってきていた録音用テレコでぼくが起こす一部始終を収録。


「大江田さーん、朝ですよー」
「ぐぐぐぐぐ……。むーん」


(ちなみにこの記録はのちほど極秘裏にふたりの間で公開され、永遠にお蔵入りとの決定を見た)


ようやくモーテルを出て出発。
最初の町はちょっとしなびた感じだが、二軒目にやる気のある若い店に遭遇。
良い店に当たることが、何よりのカンフル剤になる。


次の町に移動し、遅い昼食。
ヌードル専門ショップに入り、大江田さん、何やら怪しげな注文を。
「冷やしうどんだって書いてあるんだよ…」


アメリカ和食には気をつけろ。
冷やしうどんには、あえなく玉砕だった。


夜はモーテルでWWEを見ながらビール。
明日は長距離移動が待っている。


つづく。(松永)


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