Al Caiola - Don Arnone / Great Pickin’

Hi-Fi-Record2006-06-24

 レコード音源がラジオにふんだんに用いられるようになるアメリカ50年代初頭期になると、ラジオ・オーケストラは解体を迫られることになった。それまで定時のニュースからバラエティ、ミステリー・ドラマ、週末のファミリーコンサート番組まで、ありとあらゆる番組のありとあらゆるタイプの音楽を生演奏していたラジオ専属オーケストラのミュージシャンが、ここから10年ほどの間に少しずつ職を失い始めていく。
 ラジオ・オーケストラの解体と、レコード産業の規模拡大にともなうスタジオ・ミュージシャンの伸張とが表裏をなす同時進行が始まる。なにしろ1950年時点では、ラジオの普及率は全米で90%を優に超えており、テレビはなんとまだ1%。そしてレコード産業は、急成長を見せ始めたばかりのビジネスだった。
 こうしてラジオ出身の音楽家達がレコードの編曲や、演奏の世界に飛び出していくことになったのだ。



 アル・カイオラはNYのラジオ専属オーケストラのアレンジャー兼ギタリストの出身。
 譜面がバッチリで仕事が速く、3時間で1曲仕上がるのが通例のレコーディングだったのが、彼がリーダー・シップをとると3時間で2曲仕上げることができたという。レコーディング・スタジオは音楽の収録の場所であり、音楽の創造作業は、スタジオに入る以前に終わっているべきだという意識が徹底していた時代。彼とレコーディングを共にするスタッフやミュージシャンのチームが出来上がっていた。職人中の職人である。



 メロディを弾かせても、アドリヴを弾かせても、ブレることがない。タッチが実にしっかりしている。メジャーな場所で仕事をしてきただけあって、華やかな外連味が充分だ。
 それでいて自身のアイドルだったデュアン・エディを真似たサウンドを、ちょろっと盛り込んだりするお茶目なところも持ち合わせている。



 このアルバム収録の「キャラヴァン」は、必聴。どうぞぜひご試聴を。(大江田)


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