Devonsquare / Walking On Ice

Hi-Fi-Record2006-08-01

 先日、店頭に見えたお客様から、ピーター・ゴールウェイの運転する車に同乗して、彼のライヴに付き合ったときのエピソードを伺った。自分の車にギターを積み込んで、車を運転しながら会場に向かうあいだを、楽しく過ごされたという。そしてDevonsquareのHerbert Ludwigが亡くなったと伺った。昨年の秋口のことらしい。それ以来、活動を中止しているらしい。



 Devonsqureと言えば、ピーター・ゴールウェイと関わりの深いフォーキーなSSWタイプのグループとして、知る人ぞ知る存在だ。東海岸のフォークからシンガー・ソングライターへと連なる伝統に導かれながら、斬新なサウンドと作品を重ねてきた。


 Devonsqureとピーターが出会ったのは、メイン州ポートランドの街。ボストン辺りからだと、北に向かって車で半日以上のドライヴになる北の街だ。人影の少ない日曜日のダウンタウンあたりを歩いていると、パブのガラス窓にデイヴ・ヴァン・ロンクのライヴの告知ポスターが貼ってあるのに気づいた。フォークが盛んな街なのかもしれない。そういえばデイヴ・ヴァン・ロンクも2002年に亡くなってしまった。
 北の果てと言うには大げさだが、知的な雰囲気の街であると同時に、空がちょっと重く感じられて、いくばくか荒涼とした雰囲気がただよっていたように覚えている。そしてひんやりとした空気感、それがぼくのポートランドの記憶だ。



 Devonsqureの彼らは、街のクラブを本拠にして活動を続けていたという。夜になると地元の人たちが集うスペースがあって、そこでは歌が歌われているのだろう。そこには街を外から見ただけでは気付かない暖かい空気が、流れているに違いない。



 あのひんやりした空気。Devonsqureの音楽を聴くたびに、それを思い出す。レコード棚からいまいちど引っ張り出して、知的でスマートなサウンドにひたりながら、あの街のことを思い出してみることにしよう。(大江田)



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