Tony Bruno / The Beauty Of Bruno

Hi-Fi-Record2006-08-04

アメリカの友人Aとした話。


A「最近、トニー・ブルーノ聴いててね」
松「へえ。いいよね。彼はグッドタイム・ミュージック界のトニー・ベネットだよね。アンダース&ポンシアが全面的に協力してる」
A「彼のファーストはキャピトルから『An Original By Bruno』というタイトルで出てる」
松「カーマ・スートラ・プロダクションの制作でね」
A「本当は最初はブッダから出てたんだ。金網にもたれかかってるやつ」
松「タイトルもジャケも全然違う。『The Beauty Of Bruno』だよ。ブッダにとっては2枚目のリリースになるはずだったんだよね。でも、あれって正式には出なかったんじゃない?」
A「どうだろ? アメリカのレコード界には、そういうミステリーは今でもいっぱいあるよ」
松「ブッダの盤では、最初の曲『My Yellow Bird』が始まる前に、彼が息を「スッ」と吸う音が入ってるじゃない?」
A「それがキャピトルでは消されてしまってるんだ。あの音、何だか知ってるかい?」
松「歌う前の呼吸なんじゃないの」
A「あれはさ、彼がマリファナ煙草を吸ってる音だよ。だからキャピトルは削除したんだよ」
松「……そうなんだ。そう言えば、あのブッダ盤では彼の二の腕から刺青がのぞいてる」
A「ニューヨークのイタリア人街って、ホントに危険なところもあってね。でも、彼らはみな自分たちの街に誇りを持ってる。危険なバッド・ボーイだけど、情熱にあふれたホーム・ボーイでもあるわけ」
松「あの音があえて残されたのは、彼がイタリア人街出身のバッド・ボーイであることを誇りとともに知らせておきたかったから?」
A「どうだかね。それはミステリーだ。でも、あの音は吸ってる音だよ。ぼくにはわかる」
松「ブッダって、トニー・ブルーノの前のカタログがキャプテン・ビーフハートの『セイフ・アズ・ミルク』だもんね」
A「結構、あぶないレーベルだったんだよ」
松「ぼくもまたトニー・ブルーノが聴きたくなってきた。でも、こんな話聞いちゃうと、あの音がないと満足できないかも」
A「くわばらくわばら……」
(松永)


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