Billy Field ビリー・フィールド / Bad Habits
ちょっと耳にしただけなのに、なんとも忘れがたいメロディがある。なんとなく気になっているけれども、誰の何という歌なのかわからない。そして、それがわかった時には、むやみに嬉しくなってしまうという経験。
ロッキンな4ビートのスイングが気持ちよくて、そしてほろ苦い気分をにじませたしゃがれ声のボーカルが良くて、ビリー・フィールドのアルバムを手に取った。ここ数年前のことだ。アルバムを聴き進むうちに、あれ、どこかで聞いたことがあるぞと思わせるメロディと出会った。それがアルバムのB面に収められていた「You'll Call It Love」だった。あらためて調べてみたら、その曲は1981年ごろにNEWSという名前のウイスキーのCMとして使われていたことがわかった。
ああ、そうかと思い出す。1981年と言えば、ボクが28才の頃。郊外の私鉄駅を降りて、だらだらとして坂を下ってしばらく、多摩川にほど近いマンションでの暮らしを始めた頃だ。一人目の娘がよちよち歩きを始めた頃のことだろうか。安月給の駆け出しのサラリーマンの暮らしを、せっせとこなしていた毎日だったに違いない。
フトコロのさびしいボクにウイスキー NEWSのプロモーションが届いたのだろう、若い男性が家庭で飲むウイスキーといったキャンペーンが行われていたNEWSを、近所の酒屋で買い求めた記憶がある。
テレビのコマーシャルで何気なく耳にしていた「You'll Call It Love」。メジャーのコードが続くコード進行なのに、どこかしらせつなくウェットな気分を残すメロディ。
これはずるいくらいにポップスの黄金律で出来上がった作品だ。でも、間違いなくいい。
Billy Fieldの若さを丸出しにするような一本気な歌い方がよく似合う。ビリー・フィールドの声と一緒に、ぼくの若かった時代がこみ上げてくる。(大江田)