Les Paul レス・ポール / New Sound, The

Hi-Fi-Record2006-08-17

 20世紀前半のアメリカ・ポピュラー音楽の主流は、ジャズ。そして中心楽器はピアノだった。そんな時代のこと。
 なんとかギターを手に、ジャズのバンドに潜り込みたい、そしてソロを取りたいと願ったレス・ポールは、ギターの音を大きく増幅する装置をギターに備え付けることを考え出し、そしてアンプを作った。それまではブラス・タイプのジャズ・バンドにおけるコード系の弦楽器といえば、バンジョーが主流だった時代だ。レス・ポールがエレキ・ギターの端緒を作った。


 ジョー・ヴェヌーティとエディ・ラングのように、ヴァイオリンとギターのデュエットでジャズを演奏するストリングバンド・タイプのバンドは、ボール・ルームでのダンス・ミュージックを演奏するジャズが優勢になるに連れて、少しずつ影が薄くなっていったに違いない。
 時代の主流のトレンドに、愛するギターを手に乗り込んでいきたいと願ったレス・ポールの情熱が、その後のポピュラー・ミュージックの姿を、大きく変えることになった。それまではピアノが用意されている場所を演奏会場とすることを余儀なくされ、そこに聴衆が集まる形態が主流だった興業が、エレキを中心楽器にすえたギター・バンドが増えていくと、どんな場所にでも気軽に出向くことが可能となった。ロックンロール、そしてロックにおける音楽の方法論のへその緒は、レス・ポールが握っていたのだ。


 このレス・ポールおじさん。いたずら心が満点で、シニカルで、発明好きで、メカニカルに強くて、完全主義者で、いかにも変人だ。
 レス・ポールの音楽は、50年代に大ヒットしている。表向きには、一般に受けるように、親しみやすく出来ている。しかし一皮むくと、変人によるフツーの人のため一風変わった音楽だということが、よくわかる。それがわかりだすと、俄然、レス・ポールの音楽が面白くなってくる。(大江田)


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