Chris Connor クリス・コナー / Sketches

Hi-Fi-Record2006-08-18

「モア・トゥデイ・ザン・イエスタデイ」という曲、
いつ頃からこんなに人気があるのだろうか。


スパイラル・ステアケースというグループは、1960年代後半にデビュー。
パット・アップトンという伸びのある高音と天才的な作曲能力を
併せ持った男性シンガーを売り出すためのグループで、
目論見通り「モア・トゥデイ」は売れたのだが、その後は完全な尻すぼみに終わった。


アソシエーションとバッキンガムズの良いところを合わせたような良さが
たった一枚だけ残されたアルバムにはよく集約されている。


こういうグループって、えてしてポップス・ファンの愛玩物として、
ひそかに愛聴されて使命をまっとうしているものなのだが、
彼らの「モア・トゥデイ」に限って言えば、その箱庭をとっくに飛び出している。


この曲が入っていることを
見ず知らずのレコードを買うときの基準にしているひとは多いはずだ。
ハイファイの買い付けだって、そうなんだから。


ブルース・ウェストコット・トリオというまったく無名のジャズ・グループのアルバムを
〈フィンガー・スナッピン・ミュージック〉シリーズでCDにしたとき、
解説を吉田哲人さんにお願いした。


そのアルバムでは、いきなり冒頭から「モア・トゥデイ」のかっこいい
疾走ジャズ・ヴァージョンが歌われる。


吉田氏に「アリーmyラブ」の中でこの曲が歌われたことあったよね、とメールしたら、
彼はそのことをちゃんと知っていた。
リチャード・フィッシュ(グレッグ・ジャーマン)がクリスマス・パーティー
恋人のウィッパーに向けて歌ったのである。


アリーmyラブ」は何枚かサントラが出ているのだが、
このときリチャードが歌ったヴァージョンは収録されていない。
もし音源として存在するなら、DJするときには是非使いたい。


女性のカヴァーなら、このクリス・コナーが結構いい。
日差しに照らされた夏草の匂いがする。(松永)


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