Dan Hicks And His Hot Licks ダン・ヒックス / Striking It Rich

Hi-Fi-Record2006-08-28

昨日、藤瀬選手が書いていた「デトロイト・メタル・シティ」をぼくも読んでいる。
最初のうちはタイトルを「デスメタル・ロック・シティ」と混同してしまっていた。
漫画のテーマには、こっちの方が合っている。
もちろんロック・ファンならこのタイトルが
KISSの「デトロイト・ロック・シティ」のモジリであることはわかると思うのだが、
舞台はデトロイトではなくて現代の東京なわけで、まあ矛盾と言えば矛盾なのだ。


語感のインパクトと、ロック・ファンの記憶へのアピールを天秤にかけて
「えいや!」と「デトロイト」を選んだのかもしれない。
大した違いではないと思われるかもしれないが、これは大きな違い。
何よりも「デトロイト・メタル・シティ」の方が、
ロック好き読者層の記憶に直結しているのだ。


さて、「ロック・シティ」と言えば、
「シスコはロック・シティ」という曲が80年代にあった。
ジェファーソン・エアプレインのなれの果てであるスターシップの大ヒット曲である。


たまたま買付中にアメリカの音楽チャンネル「VH1」を見ていたときに、
「VH1の選ぶロック最低ソング・ベスト50」という企画をやっていて、
この曲が見事にナンバーワンを獲得していたのだった。
それぞれご意見はありましょうが、笑って納得という感じかしら?


確かに、サンフランシスコのハイト・アシュベリーと言われる一画を歩いていると、
この街は60年代後半のある時期以降、
ロックによって変わったと言われても仕方がないという思いもある。


だが、ずっとサンフランシスコを拠点に活動し続けている
ダン・ヒックスに訊いてみたいのだ。
きっと彼ならこう答えるだろう。


「シスコがロック・シティだって? 何言ってるんだ。
シスコはずっとジャズ・シティだったんだ」


西海岸でもっともデキシーランド・ジャズが盛んな街だったこと。
ジャズ文化を背景として、ギンズバーグやケルアックら、
ビートニク文学の旗手を早くから認めていたこと。
ロバート・クラムを中心とした古いSPレコードの愛好家集団があったこと
(クラムが去った今でも、それはスワップ・パーティ“交換市”として続いている)。


そういう連綿としたものは、
ヒッピーたちが来ようが去ろうが関係なく、
今も静かに続いている。
そうした、いろいろの古臭くて、ジャズ臭いもの、
その子供のひとりがダン・ヒックスである。


「シスコはジャズ・シティ」にぼくは一票入れたい。


ちなみに、ホット・リックスのこのアルバムを選んだのは、
上の文章にはあんまり関係がない。
単に、このアルバムに入っている
「ムーディ・リチャード」という曲が昔から大好きなのだ。(松永)


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