Flyer フライヤー / Flyer
先日、実家からぼくの書いた古い文章を送ってきた。
19歳の春、沖縄の西表までひとり旅したときの旅行記で、
便箋に手書きだった。
青いボールペンを使ってびっしりと書いてある。
これはとても直視できないぞ、と思ったが、
若さゆえの頭の固さを除けば、
文体のリズムなどは、今とあんまり変わらなかったりする。
その頭の固さの最たるものが、実は飛行機嫌い。
この当時、どうやらぼくは飛行機に乗るのは年に一回と決めていたらしいのだ。
らしいのだ、じゃないよ。
確かにそんなことを言っていた。
文章がどうこうよりも、そんな阿呆な信条を大事に抱いていたことが恥ずかしい。
このときの旅行は基本的にすべて船旅でまかなっていたのだが、
沖縄本島から石垣島までの便がボーイスカウトだかの研修旅行にぶつかってしまい、
一日一便の船が満席。
やむをえず飛行機を使ったのだ。
そのときに「ああ、今年はもうこれで飛行機に乗れない」なんて間抜けな溜息をついている。
しかしである。
18年前の自分に言いたい。
おまえは当時、年一回どころか、
まだ生涯で一、二回しか空を飛んだことがなかったんじゃないのかと。
乗った経験が少ないというコンプレックスを、
裏返しして偉そうなことを言っていたつもりなのである。
空の旅知らずのたわごとは、
90年代を迎える頃にはキレイさっぱり消え去ってしまったが、
飛行機嫌いを理由に一度も来日したことがない
アレサ・フランクリンやヴァン・モリソンといった超大物も、
案外、昔のぼくと同じようなしょうもないことを言ってるのではないかと
ときどき思ったりする。
さて、そういう引っかけでアレサやヴァン・モリソンにご登場いただくのも失礼。
飛行機好きになったぼくが乗りたかったのに結局乗れなかったコンコルドを
あしらったナイスなメロウ・ポップ・バンド、フライヤーにしとく。(松永)