Leah Kunkel リア・カンケル / Leah Kunkel

Hi-Fi-Record2006-09-02

 リア・カンケルは、アメリカでも日本でもまず間違いなくママス・アンド・パパスのママ・キャスこと、キャス・エリオットの妹と紹介される。リアが、7歳年下だ。彼女のもとにはママ・キャスが健在だったときも、そして亡くなった後になっても、姉のレパートリーを歌わないかという誘いが随分と舞い込んだ。しかし彼女はママ・キャスの妹としてデビューすることを望まなかった。妹というのはそういうものだろう。



 そのリアがデビュー作「Leah Kunkel」を制作するに際して選曲したママス・アンド・パパスのレパートリーが、「ステップ・アウト」だ。デニー・ドーハティがリード・ボーカルを取っていた作品を取り上げた。作者は、グループの顔だったジョン・フィリップスだ。ママ・キャスがリードボーカルを取っていた作品を歌うことがなかったリアらしい選曲と言えるかも知れないが、この作品を注意深く聞くと、バックコーラスにママ・キャスの歌声にも似たニュアンスが感じられるし、もっと言ってしまえばママ・キャスが歌っていたらこんな風になっていたのではないかと思わせる仕上がりでもある。それがちょっとした切なさを誘う。



 リア・カンケルは、著名ドラマーのラス・カンケルと若くして結婚する。そして残念なことに、別れを経験した。直後に制作したセカンド・アルバムのタイトルが「I Run With Trouble」。その通り、確かに人生には辛苦がつきものだ。離婚の苦しみをにじませる歌詞作品を取り上げるこのアルバムには、同時に未来へのほのかな光明を感じさせる作品も配されている。リア・カンケルのボーカルには、ほどよい楽天性が響いている。それが聞き手の肩の力を抜いてくれる。(大江田)


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