Geoff And Maria Muldaur / Sweet Potatoes
9月は十五夜さんの月。
曲の中の名月と言えば、ぼくにはこれ。
ジェフ&マリア・マルダーのアルバムでカヴァーされている「ハバナ・ムーン」。
オリジナルはチャック・ベリーのファースト・アルバム「アフター・スクール・セッション」に入っているが、
ぼくはジェフ&マリアの方を先に知った。
このアルバムを作っている頃は、すでに夫婦仲があやうかったらしくて、
ファースト「ポテリー・パイ」のような仲むつまじさはあまり無い。
「ハバナ・ムーン」のムードは、酒酌み交わしつつ、といった風情でよろしいが、
その相手はマリアではなく音楽的な相棒であるエイモス・ギャレットに替わっているという感じ。
男やもめ(になる予定の男)の、グチすれすれの打ち明け話。
それを、ちょっと緑がかった満月だけが空から見ている。
もちろん、そういう歌詞ではありません。
チャック・ベリーのオリジナルの方は、しかばねの上に座り込んでいるような
タフなひややかさがあって、いつでも背筋がゾクゾクする。
こっちの月は妖しい白銅色をしているだろう。
「ハバナ・ムーン」をライヴでやってくれるのなら、
どんなことをしてもチャック・ベリーを見ておきたいと思うのだけれど、
ついぞそんな話は聞いたことがない。
ジェフ・マルダーはまた「ハバナ・ムーン」を歌ったりしないのかな。(松永)