Chet Atkins チェット・アトキンス / Solo Flights
自作の歌詞を歌い、自作のメロディを歌うシンガー・ソングライターは、アメリカでレコードの録音がスタートした当初から存在していた。
ディレクターと録音技師を各地に派遣してオーディションを行いながら、地方ごとのアーチストを発掘するフィールド・レコーディングが本格化した1920年代。そうして見出され大スターに育ったジミー・ロジャースは、自作自演歌手の創始でもある。
ただし彼のことをシンガー・ソングライターと呼ぶことはない。
シンガー・ソングライターという言葉が用いられるのは、1970年代の初頭、ジェームス・テイラーやジョニ・ミッチェルなどがシーンに登場してからのことだ。
ジミー・ロジャースとジェームス・テイラーの間に横たわる違いについて、なんとなく考える。
「ジェームス・テイラー」的なシンガー・ソングライターを創出しない音楽ジャンルがある。ただしそこでも「ジミー・ロジャース」的なシンガー・ソングライターを、見出すことは出来る。伝統的なハワイアンがそうだ。伝統的なハワイアンを大切にしたアンティ・アリス・ナマケルアの音楽は、古くからのハワイ社会の思いを代弁するかのようにして立ち現れてくる。
どうしてなのだろう?
チェット・アトキンスは、シンガー・ソングライターという概念から最も遠いところで音楽を演奏しているようにボクは思いこんでいた。
ところが聴いているうちに、ふとシンガー・ソングライターという言葉が心に浮かぶアルバムがあることに気付いた。
ギターが自身の思いを語り始める。とても独白的に。
そういうアルバムに、ぼくは弱い。(大江田)