Malvina Reynolds マルヴィナ・レイノルズ / Malvina Reynolds

Hi-Fi-Record2006-09-08

 このとき御歳70歳。60年代のオーストラリア出身フォーク・グループ、シーカーズのヒット曲「朝の街に日が昇る」(Morning Town Ride)の作者がマルヴィナ。ピート・シーガーが歌っていた「Little Boxes」も、マルヴィナの作品。デビューをしたのは、50歳に近づいてから。大量生産、大量消費のアメリカの暮らしを皮肉ったうたを作り歌う。反骨の人だ。近年ロザリー・ソレルスが彼女のソングブック・アルバムを制作した。


 なんて聞くと、そうか、すごい人なのかなと思いつつ、実はちょっと気が重くなるでしょ。彼女がすごい人かどうかはともかく置いておくとして、音楽と出会うときには、余計な冠なんかない方がいい。冠をかぶせるのは、だいたいにして音楽を「売る」側の人たちの手練。音楽を「聞く」側の僕たちは、心を広く開いて音楽が飛び込んでくるのを待てばいい。


 と思う方には、このアルバムがオススメ。バーズ、ディラーズ、サンシャイン・カンパニー、マフィット&デイヴィスなどの二世代も若い音楽家と楽しげにコラボレーションしている。それだけでもなんだかいいなあと思うのだが、なにしろ作者版「朝の街に日が昇る」の素晴らしさと言ったら、ちょっと言葉にならない。ものすごく正直な歌がこぼれてくる。


 あるときエリザベス・コットンなどを好きなファンの方がこのアルバムを購入され、レジでお話しをしているときに「ぼくは、おばあちゃんファンなんですよ」と言われた。
 「おばあちゃんファン」って、いい言葉だなと思った。おばあちゃんの歌は、時として僕らをとても正直にする力を持つのだ。(大江田)



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