Kathy Dodge Trio キャシー・ドッジ / Kathy With A K
ローカルなレコードという表現を、ハイファイのホームページではよく使う。アーチスト本人の自主盤であったり、ごく小さなマイナー・レーベルからのものだったり、アーチストがコンサート会場で手売りで売っていたり、アーチストの活動拠点界隈で売っていたりしたレコードだ。
アメリカの場合は、マイナーからメジャーまで、アーチストにはいくつもの階段が用意されている。
なんらかの理由でその階段を上らなかった優れたアーチストが、ローカルの音楽シーンに止まっていることもある。
日本ではメジャーなアーチストと思われているアーチストが、実は思いもかけずローカルな音楽シーンで長く活動を続けている人だったりする例もある。
アメリカの音楽シーンの重層的な構造は、まだまだ日本では充分に理解されているとは言い難い。
地元マイナーからデビューしたアーチストは、ローカルの活動を経て、すこしづつ階段を上るようにしてメジャーへの道を歩む。
階段を上ってみて何が変わるのかと言えば、レコードの売れ行きとか、コンサートの規模とか、タイアップの状況とか、露出の規模とか、日々の忙しさとか。そして当たり前のことだけれども、アーチストのインカムも変わるのだろう。音楽にもスケール感が出てくるのかも知れない。
でも、アーチスト自身が持つ音楽の根っこが変わるとも思えない。
アメリカに繰り返し通ううちに、ローカルなマイナー・レーベルのアーチストと、メジャーのアーチスト間には、それほどの音楽性の違いがないことに気付いた。すると俄然、ローカルなアーチストへの興味が湧いてきた。
優れてローカルなアーチストと出会うことは、ハイファイの買付の楽しみのひとつだ。
メジャーなアーチストとひけをとらない音楽性。加えてインティメイトな親しみやすさ。音楽の自由な発露。
それがらひとまとまりになって、レコードの溝で踊っている。
キャシーのレコードは、とある田舎町のレコード店のストックにしまわれていた。大切にビニール袋を掛けられていた。NY州ロチェスターで活躍していた人とメモが付いていた。
いかにも時代を感じさせる髪型にびっくりしながら針を落とすと、すっきりと背筋ののびた演奏だった。その気持ちよさに惚れた。
こうしてレコードを大切に扱う店主の気遣いがうれしい。愛されいてるレコードを手にするのは、とても気持ちのいいことだ。(大江田)