John Hartford ジョン・ハートフォード / Iron Mountain Depot

Hi-Fi-Record2006-09-15

 戦前ジャズの世界では花形楽器だったバンジョーは、ギターに取って代わられるうちに、その座をすべり落ちた。
 ジャズの世界でバンジョーが消えかかった頃に、ブルーグラスの世界では、バンジョーが新たな命を得て復権していった。
 ジャズのバンジョーは4弦。ブルーグラスで用いるバンジョーは5弦だ。


 この5弦の音色がブルーグラスバンジョーの面白みのひとつになっている。
 そしてフィンガー・ピッキング。ジャズの時代に用いられたバンジョーではピックでコードを弾きながら、そこにメロディを交えていく手法が主流だったのが、ブルーグラスになると右手の指3本を使って分散和音を弾きながら、そこにメロディを盛り込んでいくようになる。


 フィンガー・ピッキングのフレーズに、変化が見られるようになるのは、1960年代の初め頃。ビル・キース、ロジャー・スプラッグ、ボブ・トンプソンといった演奏家達が、ユニークなフレーズを弾くようになった。バイオリンやギターのように4度の調弦を主として構成する楽器でとは違い、バンジョーは3度間隔で調弦する弦を3本持っていいて、それがフレーズの面白みを生みだすことになる。
 そうした新しいバンジョーの奏法を独自にグンと進歩させたのが、ジョン・ハートフォードだ。


 うにゅうにゅとするフレーズを弾いたり、ドローンを響かせるどこか懐かしいコードを弾いたり、リズム楽器的に和声を用いたり、ジョン・ハートフォードのバンジョーの使い方はとてもおもしろい。彼が書くメロディそのもの(ジョンはSSWだ)、あるいは音楽の発想そのものに、バンジョーの楽器特性が影響しているようにも思える。どこかしら永遠回帰的な、いつ終わるとも知れないらせん階段的なフレーズと音色のように聞こえることがあるのだ。


 本アルバムに収録の「Hey Jude」。ぜひいちど、ご経験下さい。 (大江田)


http://www.hi-fi.grjp