Rahsaan Roland Kirk / The Return Of The 500lb Man

Hi-Fi-Record2006-09-26

テレビを点けたらそのドキュメンタリー番組はもう始まっていた。
というより、知らずに見たのだ。
ハーレム・グローブトロッターズの歴史を。


1920年代のアメリカで結成された、
史上初めて黒人だけが選手のプロ・バスケットボール・チーム。
なんだ、NBAなんて今は黒人ばっかりじゃないかと思うだろうが、
何事にも始まりはある。
20世紀になってさえ、アメリカ社会の黒人差別がなお根強かったことは
誰だって知っているだろう。


ハーレム・グローブトロッターズにとっての”プロ”とは、
単なる職業としてのスポーツ選手のみならず、
人間離れした動きとユニークなギャグ・アクションを結びつけることにあった。
まるでサーカス!
ミンストレル・ショウやサーカスの要素をはらみながら、
一種の人気興業として彼らはその歴史を紡いでゆく。


その歴史は、彼らが当時のアメリカ最強の白人チームを
ガチンコ試合で劇的に打ち破ったことから伝説になった。
しかし、黒人選手が普通にNBAに参加出来るようになった1950年以降、
選手供給源としてハーレム・グローブトロッターズ
一段と注目を集めるようになっても
彼らはおどけたギャグを決してやめなかったのだった。


それは、彼らの楽しいゲームを見ることでバスケを始める黒人の子供たちのためだった。
もうとっくの昔になくなってしまったと思いこんでいた
ハーレム・グローブトロッターズは、今なお健在で、
世代交代を繰り返しながら世界中をツアーしているんだという。


その、ハーレム・グローブトロッターズの試合が始まる前のテーマ・ソングとして
動物の骨(ボーンズ)をカチカチ鳴らしながら口笛を吹く黒人芸人
ブラザー・ボーンズの「Sweet Georgia Brown」が、もう50年以上も
試合会場で流され続けている。


ぼくはこの曲を、ローランド・カークのこのアルバムで知った。
カークのアレンジは、ブラザー・ボーンズのヴァージョンそのままである。
完コピであることに、譲れない美学と敬意が込められている。


もっとも、それはのちに知ったこと。
ブラザー・ボーンズを知る以前に、
ぼくはカークの「Sweet Georgia Brown」を100回は聴いている。
誰がオリジナルだとかいう詮索よりも、
その思い入れの方がぼくには大事なのだ。


このアルバムでは「There Will Never Be Another You」も大好きだ。(松永)


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