The Modern Folk Quartet モダン・フォーク・カルテット / Changes

Hi-Fi-Record2006-10-05

 大好きな街、石川県金沢市にある大好きなライヴ・バー、もっきりやまで、MFQのライヴを聴きに行ったことがある。
 週に何本ものライヴを企画し、それを続けて35年。すごいお店だ。


 ライヴ当日の午後、電話で予約したチケットを受取りに行ったところ、店の奥ではMFQのメンバーが楽器を取り出して、リハーサルを始めようとしていたところだった。
 ツアーに同伴していたマネージャー氏は、古くの友人。いてもいいよとのお許しをもらって、お店の美味しいコーヒーを頂きながら、リハーサルの一部始終を見てしまうという幸運に浴した。



 今はMFQと名乗っている彼らは、その昔、63年にデビューした頃はModern Folk Quartetと称していた。フォア・フレッシュメン・タイプの驚異のハーモニーを軽々とこなすフォーク・グループで、楽器演奏も上手く、レパートリーの構成も見事だった。僕の遠い憧れのグループだった。



 リハーサルが進むうちに、バンド内でのメンバーの役割のようなものが見えてきた。ヘンリー・ディルツがバンドのスポークスマン、サイラス・ファーラーは精神的な支柱。ジェリー・イエスターとチップ・ダグラスは音楽的なアイデアマン。とくにコーラスとなると、それはチップの役割のようで、ハーモニーの構成音を忘れていたヘンリーに、ここではこの音を歌うんだよ、こうしてメロディを取りながらハーモニーを付けるんだと教えていた。



 その様子を見ていると、チップの頭の中にある和声はすでにテンション・コードになっていて、その構成音を楽器とコーラスに当てはめながら、まとめていっていた。ヘッド・アレンジ、そしてコード感はジャズなのだった。
 レコーディングの際にもそうだったのかどうか、それは判らないけれども、あらためてこうしてレコードを聴き直すと、彼らの豊かな発想と技術に驚かされる。マイナー・キーのメロディで、6度のハーモニーでメロディを歌わせたり、下降するメロディに上昇するフレーズのハーモニーを添えたりと、それをあっけないくらいにあっさりとやってのけている。ダイナミックでドラマチックな集散を繰り返すコーラス。ちょっとしたジャズ・コーラス・グループよりも、よっぽど上手いし、よっぽどジャズになっている。


 その日の夜のコンサートは、偶然に出会った金沢のお客様(ハイファイのお客様にライヴ会場でお会いした!)のご厚意で、一番前で聴いた。
 サイラスの足元に置かれた曲順表に気付いてじっと眺めていると、サイラスからダメだよぉ、見ちゃと言われた。


 このアルバムに収録の「Farewell」。ボブ・ディラン初期の作品だ。
 この曲のカバーでは、Modern Folk Quartetのヴァージョンが一番好きだ。「若さ」の時代から、そっと抜け出していく一人の青年の心情が、ほろっとした哀感とともにさわやかに歌われている。(大江田)


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