David Seville And The Chipmunks / Sing Again With The Chipmunks
3年前のクリスマスに合わせて発売されたチップマンクスのベスト盤に
ライナーを書かせてもらった。
世界有数のチップマンクス・コレクターである岡田崇さんとの仕事で
とても楽しかった。
そのときに話題にしたことで興味深かったのは、
チップマンクスのオリジナル・アルバムで
初期の4枚に使用されている色つき銀紙のこと。
1950年代末のリバティ・レコードは、
レコードを音の出る一種の工芸品と考えていたフシがあり、
アートワークにも非常に凝っていた。
まったく売れそうもないものでも、手を抜かず、
ジャケをくりぬいたり、ひとをビックリさせるようなデザインを平気でほどこした。
チップマンクスは子供向けのレコードだったから、
子供の目を惹くのは光り物だろ? とばかりに
赤や金や青色に光り輝く銀色を台紙にして、その上にキャラクターを印刷したのだ。
その印刷方法が、今の技術では逆に難しいのだという。
いや、出来ないことはないけど、途方もなくお金がかかるのだったかな?
DTPの時代、オフセット印刷の時代になって、
なんでも手早く、安く出来るようになった印象があるが、
実は出来なくなったことも結構多いんだそうだ。
”便利”の名のもとに、みんなに内緒で美しいものを殺してはいないか?
それって音楽ソフトの変化とか、この世のいろんなものに当てはまる話じゃないか?
リバティ・レコードがリリースしたチップマンクスの銀紙ジャケットは
進歩や便利によっては絶対に再現されない。
それは時代の先を本気で取ろうとしていた人たちの
意地と粋と無理が相まって生まれた気高い魂のようなもの。
だから、チップマンクス、もう一回歌え。(松永)