Buddy Morrow バディ・モロウ / New Blues Scene

Hi-Fi-Record2006-10-11

どうやらおれはトロンボーンの音が好きらしいぞ。
そう気がついたのはいつごろか。


豪快なサックスよりも
鋭いトランペットよりも
ふくよかで、どこか間延びした(余裕とも言う)トロンボーンに人間味を感じる。


誤解をおそれずに言えば、
ジャズ・ミュージシャンに逸話は数多くあれども、
トロンボーン奏者で破滅的な人生を送ったとか
ドラッグで夭逝したとか
そういうひとはいないはず(いたらゴメンナサイ)。


フランク・ロソリーノという愛嬌ある顔つきのトロンボーン奏者が
下手の横好きな歌をうたいまくったアルバムがあって、
一番好きなトロンボーンのレコードはそれ。


その次はハロルド・ベターズという東海岸のR&Bジャズ系のおじさんが
「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」をいい湯加減でうたったアルバム。


なんだ、トロンボーンの演奏じゃなくて歌ばかりじゃないか。
いやいや、良いトロンボーンは良い歌を兼ねるのである。
というか、そのひとの吹き方の味が、そのまま歌に出る。


サケロックのハマケンとか、
NRBQトロンボーンを吹くドン・アダムスとか、
ぼくが自然と気になる場所に、何故かいつもトロンボーン吹きはいる。


バディ・モロウはジャズ・ミュージシャンというよりも
スタジオ・ミュージシャンとしての評価がはるかに高かったひとで、
面白みのあるプレイよりも、確実な演奏技術で定評があったことをうかがわせる。


このアルバムではウォルター・レイムのアレンジのもと、
60年代後半のポップ・ヒットを吹いている。
レントン・ウッドの「ギミ・リトル・サイン」をやってくれているのがうれしい。


友だちのちょっとしたひとことで救われる、というような雰囲気を持つこの曲が
昔からとても好きだ。


バディ・モロウは、この曲を吹いているとき、
少しだけ”はみだす”。
ちょうどソロに移る瞬間だ。
そこがたまらない。
トロンボーンのバルブを先に押しすぎて、感情がこぼれ出ちゃったのかもしれない。
そんなことを想像させてくれるトロンボーンに、しばらくは逆らえない。(松永)


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