Billy Meshel / A Love Song Of A. Wilbur Meshel
ソングライターがどんなに良い曲を書いていても、
そのひと自身が歌っているレコードには興味がない。
アメリカ人(だけに限らないかもしれないが)にはそういうところがある。
だから、有名ではあってもレコードは売れない。
ダン・ペンやジェリー・ゴフィンのソロ・アルバムは
今でこそ伝説の名盤だったが、当時は誰も買わない類のレコードの筆頭だったという。
ドラマや映画が大ヒットしても
その脚本まで読もうというひとはいないという感じなんだろうね。
それでも、そういうレコードが結構な数作られているのは、
歌をつくるからには、やっぱり自分でうたいたいという気持ちが
根源的なところで誰にでもあるからだろう。
ビリー・メッシェルは東海岸系の職業作曲家で
どちらかと言えばバブルガム系の仕事が多い。
ジェフ・バリーほどの成功には恵まれず
ロン・ダンテほど美声でもない。
ジャケだって、もう少し気張って洒落たってバチはあたらないのに、
最初から人生のバチにあたったようなしょぼくれぶり。
あんた売れたくなかったの?
ソロのレコードなんか作りたくなかったの?
それでも彼はレコードを作った。
裏ジョン・セバスチャンみたいな、いいレコードである。
こういううらぶれたシティ・ボーイがいてもいい。
彼の横に座って鼻歌でも聴いてみたくなる。(松永)