Otto Cesana オットー・セサーナ / Autumn Reverie
オットー・セサーナは、作編曲、そして指揮者。60年代に彼が作品を残したAudio Fidelityでの一連のシリーズは、ジャケットに美しい女性の姿をあしらったもので、裏を返すとオーケストラを指揮するセサーナの後ろ姿が毎回にわたって掲載されている。
裏ジャケットの写真を見るとすぐに気付くことは、まるでコンサートホールのステージ上のように演奏家が並んでいること、そして上からのぞき込むようにして配されたマイクによって収録されているということだ。大きなレコーディング・スタジオを用いて、コンサートホールでの演奏会を録音するような方法を採用しているのである。
このアルバムは1967年の制作なのだから、もう既にスタジオにはブースが設けられ、パーテーションによって仕切られたブースの中で、それぞれの楽器が演奏する手法がとられ始めていたはずだ。
オットー・セサーナは時代の先端の方法を採用することなく、レコーディングを行っていることになる。ホールの響きのままの音楽を、レコードに収めたかったに違いない。
彼の作品では、ポップス・オーケストラが通例にしている同時代のヒット曲のカバーを収録していない。楽曲のすべてを自ら書き、編曲している。ラフマニノフのコンチェルトやチャイコフスキーのシンフォニーのようなロマンチックな作風とでも言えばいいだろうか。豊穣なもの、包み込むような暖かさ、内から光を放つもの。そうしたものをイメージさせるメロディと音の連なりが、響いている。
そうした彼のオーケストラが、好きだ。ポップス・オーケストラともクラシック・オーケストラとも言い難いレパートリーの構成の仕方に魅力を感じることもあるが、なによりも中域の厚みを感じるストリングス、そしてそれがあふれ出てくるような響きがとてもいい。
この音に埋まりながら、どこかに流れて行ってみたい。そんな思いに、ふと駆られる。(大江田)