England Dan And John Ford Coley / Nights Are Forever

Hi-Fi-Record2006-10-25

 そろそろイングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリィがピッタリの季節だ。朝夕の冷え込みが感じられるようになって、道筋に枯葉が舞うようになると、このアルバムのB面冒頭に収録された「秋風の恋」が聴きたくなる。


 久しぶりだね、どうしてる? 実はずっと長いあいだ君の笑顔を忘れられずにいたんだ。君の人生を変えたいと思っている訳じゃないんだよ、暖かい風が吹き星がきらめく今宵、どうしても君に会いたい。
 そんな歌詞が切れ切れに耳に入ってくる。久しぶりに彼女に電話をかけた男の子が、語りかけているのだろう。


 こうして歌詞を確かめてみると、まず秋の歌ではないだろうということがわかるけれども、なにしろ邦題の力は大きい。原題の「I'd Really Love To See You Tonight」ではなくて、僕は「秋風の恋」としてこの歌を思い返している。
 

 そのAB+AB+C+Bと繰り返されるメロディ・パターン。実はこれはアメリカン・ポピュラー・ソングの王道の方法でもある。ロックのサウンドをまといつつ、こうした構成をとるアーチストも多い。30年代のブロードウェイ・ミュージカルの時代から、今に至るまで繰り返されてきているメロディの構成方法である。
 ああ、こうなるんだろうとわかっていて、そしてそのようにメロディが展開していくのを聴きながら、胸がいっぱいになってしまう。「秋風の恋」は、その典型。Cの大サビのところにくると、ああ、来たぞ、来たぞと思いながら、そのメロディに身を委ねる。そしてああ、秋なんだなあと思ってしまうのだ。


 6〜7年ほど前だったか、もう壮年に達しているジョン・フォード・コーリィがソロ・アルバムにアンプラグドな「秋風の恋」を録音している。これがまた、たまらなくいい。(大江田)
 

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