Roland Kirk / I Talk With The Spirits

Hi-Fi-Record2006-10-29

現在まで50枚近くリリースされた彼のアルバムの中、12枚目に当たる本作。

昔から彼のアルバムをそれとなく聴いていたけれど、このMercury傘下のLimeligh レーベル期(1964〜1965)は
なにか他の諸作と少し空気が違う気がする。本アルバムの1曲目。、出だしにカッコーの古時計の時報が鳴る「Serenade To A Cuckoo」から身震いしてしまう。雰囲気はまさに深夜。濃密な闇に覆われた感覚が心地良い。


ちなみに僕はこのLimelightというレーベルの装丁がとても好きだ。
どのアルバムも、ジャケットの色合いがシンプル且つ、なんだか異様に厳かな雰囲気。
ジャケット内側も抜かりない。Milt Jacksonの「近代美術館のミルト・ジャクソン」(MOMAでのライブ録音ですね。「Flying Saucer」はU.F.Oネタ、なんて一応そっち系出身だったりします)なんか飛び出す絵本の様式。こちらはつい最近リイシューCDが出ておりますが、この中ジャケットを再現していて欲しなぁ、と思います(当方未確認)。

盲目だった彼が自身のアルバムの装丁をその目で見れなかったことが残念だ。誰かが素晴らしさを上手く伝えてくれていたらいいと思うけれど。Limelightからリリースされたジャズ作品は音の方も、スモーキーな妖気のようなもの帯びていてたまらないコクがある。


ローランド・カークの口に3管を咥えての衝撃的な演奏シーンは、僕のジャズに対する"聴かされてる"感を壊してくれた。
ジャズ界で最初「グロテスク過ぎる」と言われた彼の演奏、原因は子供の頃に見た夢にあるようだ。
2才の頃失明した彼は、子供の頃サックスを勉強しており、3管を吹いている自分の姿を夢の中にみた。
そこで、実際やってみたら「エスニックな音が出たよ。」とw。そこから呼吸法の独自開発+猛特訓のなれの果てに生まれたのが、彼のスタイル。


孤独も差別もハンデキャップもブロウして(吹き飛ばして)歩んだ求道的アティテュードが、なによりも"ジャズ"っていると強く思う。(藤瀬)


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