Emitt Rhodes エミット・ローズ / Mirror
劇団ひとりがいるなら
楽団ひとりがいてもいいだろう。
だったらぼくはエミット・ローズにその名前をあげる。
何となく顔も似て見えるしね。
あ、これは鏡が歪んでいるのね。
早熟のマルチ・インストゥルメンタリスト、エミット・ローズは
このアルバム「ミラー」(彼の3作目にあたる)のあと、
同じダンヒル・レコードから「フェアウェル・トゥ・パラダイス」という
切ないアルバムをやはりひとりだけで作り上げて、
レコード業界から姿を消した。
……ということになっているが、
実はその後、80年と2000年にそれぞれ新作を作るという話があったのだという。
昔は”幻のミュージシャン”を作るのが簡単だった。
情報も少なかったし、
なにしろ幻って美しかった。
でも、ハイファイで、アメリカのローカル・ミュージシャンの
地道な音楽活動に数多く触れるようになってから、
ぼくは幻のミュージシャンというものの存在をあまり信じなくなった。
こっちから見えないだけで、
きっと音楽は続いている。
エミット・ローズは、
今なお、彼は自宅のガレージを改造したスタジオで
レコーディングを積み重ねているのだという。
21世紀の”楽団ひとり”を
是非聴いてみたい。(松永)