Taj Mahal タジ・マハール / Satisfied And Tickled Too

Hi-Fi-Record2006-11-07

タジ・マハールにインタビューしたとき、
このひとはずっと1930年代のドブロギターを弾いていた。


ぼくもまだライターとして駆け出しの頃だったので
ひょっとしてなめられているのだろうか? と
不安になったりしたものだが、
だが、どなたに対しても同じように応対していたらしかった。


ドブロの音色も、おれの答えのうち、か。


録音テープを起こすとき、
あまりの音色の気持ちよさに、
質問への回答を聞き飛ばしてしまうことしばしば。


あの音を言葉に訳せたら、どんなにいいだろう。


しかし、逆に言葉が音楽を彩ることも多い。


76年にタジがリリースしたこのアルバムは、
傑作の呼び声高い「ミュージック・ファ・ヤ」の前作ということで
どうも影が薄いが、ぼくとしては負けず劣らず好きな作品だ。


タイトル曲をタジが敬愛するミシシッピジョン・ハートの作品で
日本語で簡単に言うと「おれはまったくもって楽しいよ」といたっところか。
英語の”tickle”は面白い言葉で、
”くすぐったい”とか”むずむずする”みたいな意味から転じて
”be tickled”で”面白い”とか”楽しい”という風に使える。


「くすぐったいほど楽しいよ」という言葉の選び方が
自分の音楽に似合っていることを
ジョン・ハートも知っていたし、
タジは誰よりもよくわかっているに違いない。(松永)


Hi-Fi Record Store