Bert Kaempfert And His Orchestra / Christmastide With Kaempfert

Hi-Fi-Record2006-11-09

 ベルト・ケンプフェルトは、ドイツのポップス・オーケストラのリーダー/アレンジャー。ソロ・トランペットをフィーチャーしたユニークなサウンドで知られている。ちょっと間延びしたような愛嬌のあるエレキ・ベースの音色や、ブラシ・ドラムも彼のサウンドを成す要素のひとつだ。ちなみにトランペット奏者は、フレッド・モック。彼の音色が、ベルト・ケンプフェルトのサウンドを最もそれらしくしている。


 もともとからグレン・ミラーのようなブラス・オーケストラのジャズが好きだった人。自身のオーケストラのサウンドでも、ブラスのサウンドを組み立てていく手法を採っている。クラシック出身のオーケストラのリーダー/アレンジャーが好んで組織するストリングス・オーケストラではない。
 それほど大胆なフレーズではないまでもフレッド・モックに絶妙なアドリヴを吹かせるのは、ジャズ出身だからだろう。メロディに適度な演出を加えることで、音楽を引き立たせる工夫を加えている。



 その彼のクリスマス・アルバム。いつものサウンドかなと思いつつ針を落とすと、その予感は間違いではないものの、なんだか気持ちよく裏切られるサウンドが流れ出して、これは驚いた。
 どちらかと言えば、無骨さを感じさせることもある彼のサウンドが、なんとも言えずキュートで、可愛らしかったのだ。
 それって、クリスマス・メロディだから、出来ちゃうことなのかもしれませんね。


 タイトルやアーチスト表記にはWithやAndといった英語が用いられている。ドイツ語だったら、MitとかUndとかになるはず。曲目表示も、英語で行われているし、ジャケットに書かれた注意書きの文章も英語だ。
 しかしこれはオリジナルのドイツ盤なのだ。
 ヨーロッパ盤のイージー・リスニング・レコードを手にすると、自国語ではなくこういうふうに英語で表示されていることが少なくない。アメリカ輸出用の商品だったのかな、ドイツ国内で売られたレコードではなかったのかな?などと思ったりするのだが、何だか不思議な意匠をまとったドイツ盤である。(大江田信)


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