Mauriat ポール・モーリア / Toca los Exitos de Hoy

Hi-Fi-Record2006-11-11

 先週の末にポール・モーリアが亡くなった。
 これでフランスのポップス・オーケストラの著名主宰者たちのうち、二人が亡くなった。フランク・プゥルセルとポール・モーリア。残るはレイモン・ルフェーブルとカラベリということになるが、二人とも残念ながら今では表舞台を退いてしまっている。



 モーリアの死は一般紙でも報じられていて、日本での彼の音楽への感心の広がりを思わせるものがあった。識者の方のコメントにも興味深いものがあり、中でも服部克久氏が、モーリアのことを几帳面な人だった、譜面がキレイだったと語っておられたのが、印象的だった。



 たとえば手品の場面になると必ず言って良いほど用いられる有名な「オリーヴの首飾り」。あの曲のイントロでは、ヴァイオリンのトップ、セカンド、ビオラ、チェロのセクションのそれぞれ特徴的な音色が紹介される。そのタイミングとか、その演奏時間の長さとか、左右に振り分けたステレオ効果とか、まるで煉瓦のブロックを積み重ねていくような具合だ。聴いていてとても気持ちの良い瞬間なのだが、同時に周到な計算があるのだろうと想像させる時間でもある。
 建築的な編曲技法だ。



 演奏家が自分の書いたフレーズ以外を弾くことを、モーリアが嫌ったというエピソードを聴いたこともある。
 たとえばドラマーに、メロディの節目節目で、流れで適当にフィルしてくれといった指示をする編曲家もいるのだが、モーリアの場合はそこまで逐一書き込んでいたという。彼の編曲を聴いていると、それもこのアルバムに収録しているような中南米系の楽曲など、細やかなリズムを組み合わせる音楽を聴いていると、なるほどそうかもしれないと思う。
 ストリングスとドラムのフレーズがユニゾンになっていたり、ちょっとしたところでフレーズ同士がぶつかりあい殺し合うことが無いように組み立てられている。
  モーリアの几帳面な性格は、もちろんその音楽にも表れている。(大江田信) 


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