Phoebe Snow フィービー・スノウ / Phoebe Snow

Hi-Fi-Record2006-11-23

 このアルバムを知ったのは、片岡義男さんと安田南さんがパーソナリティを務めていたFM深夜放送「気まぐれ飛行船」がきっかけだ。たぶんボクが大学生の頃、70年代中頃のことだったと思う。



 片岡さんがアーチストのことを紹介しながら音楽をかけ、そしてそれに南さんが応える、そんな進行の番組だった。おそらく事前に綿密な台本など無かったに違いない。なぜならフィービー・スノウのアルバムから選曲された「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」がオン・エアされると、南さんは自分はひどく感銘を受けたと述べ、この人はいったい幾つなの?と片岡さんに聞き返したからだ。それなりの年齢を経たブルース・シンガーのように彼女には聞こえたのだろう。ビックリしたような反応だった。



 南さんがジャズ・シンガーであることは、番組のリスナーには周知だった。自ら音楽を行う人が、目前で初めて聞いた音楽に打ちのめされるほどに反応していること、それも身体のどこかがその音楽に強く共振しているからなのだということがラジオを通してリアルに伝わってきた。南さんの興奮が、充分に音楽的だったのだ。片岡さんが、彼女はまだ22歳なのだと説明した。南さんを通して、フィービー・スノウへのボクのドアが開いた。



 それからほどなくして、日本盤のアルバムを買った。フィービー・スノウの歌唱の全体にゆるやかに流れるたゆたうビートが、好きになった。耳馴染みのあった「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」が、それまで聞いていたP,P&Mやブラザース・フォアなどのヴァージョンとは全く違う色合いを見せていることに驚き、歌う人が変わると歌がこんなに生まれ変わるのかと思った。


 安田南さんの驚きの声と、フィービー・スノウのボーカルが、ボクの中では一つのものとして今でも響いている。(大江田信)


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