The Kinks キンクス / Muswell Hillbillies
昨日、11月23日は日本では「勤労感謝の日」だが、
今年のアメリカでは一年で最大の祝日のひとつ、
サンクスギビング・デイ(感謝祭)であった。
毎年、11月の第四木曜日がこの日に充てられ、
街はひっそりと静まり返る。
この日は日本で言えばお盆と正月が一緒になったようなもの。
日本語で言うと、お盆と正月はにぎやかなイメージだが、
欧米では祝日とは、むしろおごそかに過ごすもの。
みんな里帰りをしたり、家族一緒に旅行に出かけたりして、
とにかく家族と一緒のひとときを満喫する。
ターキーやパンプキンパイを食べる。
仕事は基本的にしない。
だから、飲食店も含め、ショッピングモールは軒並み閉店。
ただし、キリスト教とは関係無い
インド料理など衆派違いの店は何も変わることなく営業しているのが面白い。
また、この感謝祭の習慣は、
ヨーロッパには存在しない。
かつてイギリスから新大陸に入植してきたひとたちが始めた習わしで、
カナダとアメリカのみのお祝い事なのである。
キンクスのレイ・デイヴィスが今年ひっそりと
人生初の公式ソロ・アルバム「アザー・ピープルズ・ライヴス」を出していて、
その中にシークレット・トラックとして
「サンクスギビング・デイ」という、ほんわかした曲が収められている。
この曲はもともと、去年、もっとひっそりと
彼のオフィシャル・サイトを通じて販売された復帰シングルだった。
現在、レイはニュー・オーリンズに自宅を構え、
ロンドンと往復する生活をしているのだという。
かつて、アルバム「マッスウェル・ヒルビリーズ」で
彼が表明したアメリカへのシャイな憧れを
30年以上かけて、ようやく実現させたのだ。
「サンクスギビング・デイには、みんな自分の故郷に帰るんだ」と歌う
このいかにもレイ・デイヴィスらしいささやかな名曲は、
実は自分が生まれ持ったイギリスの風習ではなく、
アメリカに来てその意味を知った特別な一日に捧げられている。
自分の中には無い時代と場所がぼくの見果てぬ故郷
そこに帰ってゆきたいんだ。
レイ・デイヴィスがずっと言い続けているこのテーマ、
知らない時代のレコードを聴き続けているぼくたちに
ぐっと来なかったらウソである。
ちなみに、レイの新作「アザー・ピープルズ・ライヴス」の日本盤で
ぼくは訳詞を担当させていただきました。
機会がありましたら、是非お目通しください。(松永良平)