Boots Randolph ブーツ・ランドルフ / Hip Boots!
あるとき、知り合いの編集者と話をしていて、
名盤のジャケットを今、人力で再現するという企画の話になった。
何というか、つまり、
名盤のパロジャケにすっかり食傷していたので、
どうせなら同一人物がすべてに挑戦すればよいのではないかと。
たとえばサザンオールスターズの「ヌードマン」であれば、
高波の海にすっぽんぽんで飛び込む。
同じポーズで。
あたりに人はいなそうだから、ありゃきっと冬だ。
キビしいな。
と言うか、あの飛び込んでるのは誰だ?
その人に話を聞きに行こう、とか何とか。
「クリムゾン・キングの宮殿」の顔は当然やる。
オールマン・ブラザーズのフィルモアライヴみたいに並んで座ってみる。
「山羊の頭のスープ」みたいに黄色い布に顔押しつけてみる。
まあ、その他もろもろ。
真似という意味では
かたちを真似るのは可能かもしれないが、
問題は心まで真似られるかだ。
心が真似になってなかったら、それはただの抜け殻。
勢いも味わいも無い。
そう考えると、やはりホンモノには
そういうかけがえのないものがこもっているのだなと思う。
さて、このジャケ。
横から飛び出すブーツ・ランドルフ。
このR&Bインスト・アルバムの、
”しゃしゃりでる”感じのかっこよさを
ばっちり表している。
もちろん、これは壁に彼をくっつけて撮影したわけではなくて、
”横から飛び出すように”彼を直立させて、それを横にしたものだ。
つまり、ブーツ・ランドルフはこのとき
横から飛び出すように直立した。
書くのは簡単だけど、それ、ちょっとやそっとじゃ出来ません。
彼の勢いはホンモノだったということだ。
試しに真似して立ってごらんなさい。
たぶん、ぼくらには無理だから。
背中の肉離れにはくれぐれもご注意を。(松永良平)