Percy Faith And His Orchestra / Thems for Young Lovers
それまで主としてスタンダード作品を演奏したアルバム作りをしていたパーシー・フェイスが、同時代のヒット・ソングをカバーしてレパートリーとした「Thems for Young Lovers」。これが当たって、本アルバムは36週間、9ヶ月にわたってチャートのホット200に在位した。この後に続く「Themes for 〜」シリーズの起点となった作品でもあり、また結果としてパーシー・フェイスのすべてのアルバム・カタログ中において、最も長期間のチャート在位を示した作品でもある。
アルバム・タイトルとなっている「Themes for Young Lovers」は、パーシー・フェイス自身による作品。著作権登録年度を見ると、収録の他作品よりも3年ほど前になっている。作詞者名が登録されていないところをみると、番組テーマかなにかのために書かれたメロディかも知れないが、このあたりの詳細は残念ながら判然としない。
いずれにしても「若い恋人達のための音楽集」というコンセプトが、彼の中で芽生え始めていたことが想像される。本アルバムに結実していくまでには、少しの時間を要したのかもしれない。
「I Will Follow You」「Our Day Will Come」「Up On The Roof」「Rhythm Of The Rain」などのよく知られた時代のヒット・メロディを清涼感たっぷりにテンポ良く演奏している。
一連のラテンを取り扱ったアルバムや、後年のロックぽいアルバムに比べると、音像もおとなしいし、地味な作品とも思うけれども、妙に心に残る。押しつけがましさが無く、聴後感がいい。
時代のトレンドだったボサノーヴァをいち早く取り込んだり、白人と黒人それぞれのミュージシャンのヒットソングを、アルバム中にごく自然にひとまとめにしていたり、当時の耳で聴いてみれば恐らく斬新な内容だったに違いないものと思う。(大江田信)