Botho Lucas Choir / From Germany With Love

Hi-Fi-Record2007-01-17

 レコード録音の際に、初めてエコーを用いたのは、ハーモニカのインストルメンタル・グループ、ハーモニキャツ(Harmonicats)だった。ラジオのミステリー・ドラマで使用されていたエコー効果を、1947年にデビュー曲の「Peg O' My Heart」を録音する際に用いたのだという。
 なるほど。
 この当時、音声技術はラジオの方が先進的だったことは、想像に難くない。



 アーチストがライヴを充分にこなしてきている演奏を収録することから、レコードの録音は始まった。レコーディングとは、ドキュメントだった。それぞれの演奏家が、マイクからどれくらい離れて立つか、それを指示することがSP時代の録音技師の仕事の大部分だった。



 モノラルにおける楽器の音の分離と、奥行きにおける定位に貢献することから、その後のレコード録音においてエコーが飛躍的に利用されるようになった、というのが僕の私見。エコーが効果的に配された録音は、音楽がスッキリと聞こえる。
 そして付け加えれば、モノラルの時代にはエコーは技術だった。ステレオの時代に入るとエコーは音楽になった。これも私見だ。



 ボーソ・ルーカス・クワイアの「From Germany With Love」は、エコーがとても気持ちのいいアルバムだ。
 音楽に拡がりを与え、コーラスをクールに響かせ、伸びやかな手応えを残すナチュラル・エコー。
 なにしろコンボ演奏と、それに加わるときおりのブラス。そしてダブル・カルテットのコーラスだけの音楽が、効果的なエコーによって、大きな広がりを得ている。
 エコーとは、レコード音楽における大事な要素なのだと言うことを、素直に感じさせる。
 このレコードをきっかけに、僕はクアイア・コーラスが好きになった。(大江田信)



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