Freddy Morgan フレディ・モーガン / Bunch・A・Banjos
ある日あるひととしたお話。
とある天才肌の若手外人ピアニストを見ての問い。
「どうしてあんなしかめっ面で弾かなくちゃならないんですかねえ?」
そのひとの答え。
「そりゃあ、難しいことやってるんだから難しい顔になるわな」
もちょっと食い下がってみた。
「ってことは、ニコニコしながら難しいことやるひとは、その分すごい?」
答え。
「それと音楽は別だけどね。
あと、たいていの場合、ニコニコしながらやってたら
どんな超絶技巧で演奏してても、
マジメに受け取ってもらえないんだよねえ」
プチ納得。
しかし、今から半世紀以上も昔、
アメリカの誇る冗談音楽ビッグバンド、
スパイク・ジョーンズ楽団で繰り広げられていた演奏は、
まさにそういうものだった。
つまり、
マジメに受け取ってもらえないようなことなら、すべてやってみる。
顔だって作る。
難しい顔なんかもってのほか。
ありえない顔ならしていいぞ。
その代表格がこのフレディ・モーガン。
とっちゃん坊やなえびす顔で
どんな指示でも弾きこなすバンジョー弾き。
いつも極端な笑い顔をつくっているうちに
ひょっとしたら地顔が笑顔になったまんま
元に戻らなくなっちゃったのかもしれない。
そんなハッピーサッドなストーリーを妄想してしまったら、
もうこのレコードをかけずにはいられない。
フレディ・モーガンのレコードは
ハイファイに鎮座するえびす様みたいなものなのだ。(松永良平)