The Washington Squares ワシントン・スクエアーズ / Same Title

Hi-Fi-Record2007-01-27

 アメリカに行って気づいた。車を運転する者には、サングラスは必携品だ。夕暮れ時、まっすぐのびるフリーウェイを、沈み行く太陽の方に向かって走るとなったら、まぶしすぎてサングラス無しでは前が見えない。
 ふだんから日差しが強い南カリフォルニアやフロリダ、テキサスあたりだったら、サングラスが無いと外を歩くのも辛いかも知れない。



 対人恐怖症とまでは言わないものの、初対面の人としゃべったりするときに、どうしも上がり気味になってしまうので、サングラスを用いるようになったと、かつて野坂昭如がとあるテレビ番組で語っていた。なるほどと思って、ぼくも真似したことがある。
 たぶんアメリカでは、そんな理由でサングラスを用いる人はいないに違いない。



 ワシントン・スクエアーズの面々がサングラスを付けているのは、全く違った理由。ビートニックを装うためだ。
 やや大きめのオールド・ファッションなサングラスに、レジメンタル・ストライプの細めのタイ。スリッポンとスラックスの間からは、白いコットン・ソックスが見える。
 60年代初頭のアイヴィー・リーガーたちのファッションをパロディとして剽窃している。
 


 ワシントン・スクエアーとは、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにある広場の名前。フォーク盛んなりし頃、毎週の日曜日には若き音楽達が集って、思い思いにセッション演奏を繰り広げた。その盛り上がりが続く余りに行政からの横やりが入ると、こんどは近くの店に場所を移して、土曜日の午後にセッション演奏会が持たれた。
 そこが後に(今も)ブルース・シンガーとして名を馳せるロリー・ブロックの父が経営していたアラン・ブロック・サンダル・ショップだった。



 当時のビートニックな雰囲気を盛り込んだ80年代のフォーク・トリオ。
 わかる方にはピンとくるはず。そう、彼らはピーター、ポール&マリーをパロディにしている。出で立ちのみならず、中身のほうの音楽も、である。
 他ならぬピーター、ポール&マリーのファンであるボクは、ちゃんと自宅に彼らのアルバム2枚をコレクトしているのだった。(大江田信)



Hi-Fi Record Store