Johnny Guarnieri ジョニー・ガルニエリ / Hey Lover

Hi-Fi-Record2007-02-02

ジョニー・ガルニエリのピアノは
ころころしたピアノ。


戦前から活動しているひとなので、
古いラグタイム風の指の動きをタッチが覚えているのだが、
弾くメロディはモダン。
だから、歳を取っても、
その音色は古さと新しさが入り交じって新鮮に響いた。


そのガルニエリのアルバム・ジャケットに写る美しい女性を見て、
その太い眉毛を見て、
「ああ、こういう太眉、流行った時期あったな
 また流行るときが来るのかな」
としみじみ思った。


ファッションの世界の流行サイクルというのは
驚くほど早い。


ふとテレビで10年ほど前のドラマを見たりすると、
扱っているテーマは今でも変わらないのに、
ファッション(とくに女性)の変化には驚かされる。


あの厳しい世界では、
時代を牽引するという自負と
大衆の興味に身を任せるという捨て身が
常に共存しているから、
時代ごとの変化に対して、潔いのだ。
どんどん変われる。


音楽もかつてはそうだった。
近年は、自分が育った世代に愛着を優先し、
変わってゆくこと、流されてゆくことを
自分に許さないようなムードになりつつある。


もちろん、それは反骨の精神だとも言える。


でもさ、流されていればこそ、
太い眉毛がかわいいねと思える時代にも、まためぐりあえるのにね。


もんぺで育ったから死ぬまでもんぺを履くとか、
同じワンピースを死ぬまで着続けるなんてひとは
ファッションの世界にはいない。
でも、音楽の世界では、
それが通用する。
その違いはどこにあるのだろう?
その違いが生むポップ・カルチャーとしての行く先は
どう変わってゆくのだろう?
そんなことを最近、ときどき考える。(松永良平


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