Jon Sirkis ジョン・サーキス / A Few Less Colors

Hi-Fi-Record2007-02-03

 アメリカで初めて出会ったアルバムを買うときのポイント。


 まずジャケットが物語っていること。ジャケットそのものの善し悪しではない。ジャケットにコメられている美意識が、アーチストが受け継いでいる音楽の歴史を物語っている。SSWとかジャズとかラテンなどはもちろん、ダンス・ミュージックであるるか、家庭でのくつろぎの時間のための音楽か、バチェラー・バッドのためのものかなど。
 それからどこかにレイアウトされている本人の表情写真を探す。
 そしてレコーディング・クレジット。べつに見知った名前がなくともいい。大きなポイントになるのが、録音された場所だ。




 録音された場所がポイントになることは、かつて70年代のロック・ジャーナリズムでも指摘されていたことだ。その際にはロスのバーバンクといった地名やレコード・プラントと言ったスタジオ名が取りざたされた。ナッシュヴィル、メンフィス、シカゴ、ニューヨークなどの地名が、話題となった。
 しかしそれはいかにも大都市の名前だ。レコードがリリースされることが、すでに大きなビジネスのテーブルにのっかている場合に登場する地名である。
 もっともっと小さな街の名前がクレジットされている場合だってある。いや、むしろそうした場合の方が多いことに、実際の大いなるレコードの山を前にして、思い知らされた。




 コロラド州ボルダー。今ではキューちゃんこと高橋尚子選手や有森裕子選手など、小出義男監督が選手を育てた場所として日本ではよく知られている。高地トレーニングに適した場所として紹介されてきた。
 コロラド州随一の大都会、デンバーの衛星都市。コロラド大学のキャンパスがある静かな学園都市、これがボルダーの姿だ。
 ボルダーで生まれた音楽の一枚。この地名がぼくにアルバムを手に取らせた。
 清涼な土地から生まれるシンガー・ソングライター音楽には、人をして深く内向させ自身を培わせる力があると思っているボクには、条件反射のような行動だった。
  フォーキーなシンガー・ソングライター作品だった。
 シンとしているところにひかれた。予感はあたっているかもしれないぞと思いながら聞き進み、「Summertime」に行き当たる頃には、買ってみようと心に決めていた。



 シンガー・ソングライターのアルバムに収録されているジャズ・カバーは、これはまた重要なポイントだ。
 ジョン・サーキスの「Summertime」。Sample Bをクリックしていただければ、聞いていただける。
 ひんやりとした冷気を感じる仕上がり。
 そうそう、コロラド州ボルダーは冬のスキーの名所への入り口としても有名な土地なのだった。ジャケットには、そんなボルダーの山並みが描かれていた。(大江田信)


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