The Lettermen ザ・レターメン / Love Book
元旦早々、銀座に行った。
「プラダを着た悪魔」を観に行ったのだ。
あまり知られていないが、
1月1日も、毎月1日(ついたち)恒例の映画ファン感謝デー。
鑑賞券はひとり千円均一になっている。
正月気分で財布もゆるんでいるので、
お得感も倍増した気分になれる。
その日、銀座に早く着いたので
夕暮れの街を散歩した。
数寄屋橋の横長いビルの前を通れば、
いやおうなしに、今は無き中古レコード店
「ハンター」のことを思い出す。
そして、ぼくにとって銀座の「ハンター」の思い出と言えば、
レターメンの「ラブ」であった。
「洋楽ラ行」のシングル盤をめくったときの体験は忘れられない。
次から次へと出るわ出るわ、レターメンの「ラブ」。
「ラブ」「ラブ」「ラブ」「レイフ・ギャレット」「ラブ」
「ラブ」「ラブ」「ラヴァーボーイ」「ラブ」……。
ちょっと誇張もあるけれど、印象としてはまさにそんなもの。
「権藤、権藤、雨、権藤、権藤……」の世界だった。
それがトラウマになったのか、
長い間、レターメンへの意味も無い偏見がぬぐいされなかった。
だいたい、その「ラブ」が
ベルト・ケンプフェルトの「ラブ」なのか
ジョン・レノンの「ラブ」なのかも知りもしなかったのに。
レターメンを新しい耳で聴き直すようになったのは、
ここ数年のこと。
正確には「聴き直す」という表現も正しくない。
たぶん、今初めてぼくはレターメンをちゃんと聴いている。
そして、心をふわっと撫で付けるそのコーラスや
当時のアメリカ西海岸の音楽的デリカシーが集約されたバックのアレンジに
結構やられている。
今「ハンター」があったら、
シングル盤をめくりながら、
「昔のひとは耳がススんでたんだねー」
言ってたりするのかもしれないね。(松永良平)