Joan Baez ジョーン・バエズ / 5

Hi-Fi-Record2007-03-01

 アカデミー賞の授賞式を見ていたら、助演男優賞アラン・アーキンが受賞した。1966年の助演男優賞の初ノミネート以来、40年振り。しかも今回は初受賞ということで、ひときわの喜びだったようだ。



 アラン・アーキンの名前は、フォーク・ファンには馴染がある。50年代の末、「バナナ・ボート・ソング」の大ヒットを放ったグループ、タリアーズの一員だった。60年代に入って音楽活動を一段落すると演劇の道に進み、ブロードウェイを経験した後に、映画界に進出している。



 そういえばグラミーの授賞式で、自身も今年今年の功労賞を受賞したジョーン・バエズが、ウディ・ガスリーの「我が祖国」の歌詞の一節を引きながら、ディキシー・チックスを紹介をしていた。華やかなドレスを着たバエズが美しく艶やかで、ちょっとびっくりした。



 そんなこんなでフォーク心がうずいた。で、買付アイテムの新着段ボール箱から引っ張り出したのがこのアルバム。アルバム「5」。ジョーン・バエズ、1964年の作品だ。
 アルバム冒頭の収められたフィル・オクス作「フォーチュン」が好きで、かつて良く聴いていた。甲高い声が目立ってしまいがちなバエズの初期レパートリーなのだが、この曲でのキー設定がいつもよりもやや低めで、そのせいもあって落ち着いた雰囲気がある。3曲目のディラン作「悲しきベイブ」も、内省的でいい。これもキーが低めだ。



 もうこの頃にはバエズとディランの付き合いは始まっていたはずで、それにしてはバッハのメロディやトラッド作品など、彼女を知的な女性として演出しようとする選曲が目立つ。ヴァンガード側の意向が働いたのかも知れない。翌年のアルバム「Farewell Angelina」では、レパートリーがSSW作品の方向に激変する。



 この時期あたりのバエズの歌唱には、どこかしらまどろむような空気感がある。人知れずいい隠し味になっている気がする。それが彼女のすぐれた資質のひとつではないか、と思うのだが。(大江田信)



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