Jorge Calderon ホルヘ・カルデロン / City Music

Hi-Fi-Record2007-03-05

このレコードを買付の箱から店頭に出そうとしていたら
藤瀬が「あーこれ、白いカーティスでしたっけ?」と
ツッコミを入れてきた。


ファルセットが心地よくファンクする「At The Beehive」あたりを指して
そんな言い方がまかり通ったのはフリーソウルのころ。


このレコードとぼくの出会いはもうちょっと昔にさかのぼる。


大学一年の頃からバイトを始めたとある中古レコード店に、
アメリカン・ポップスやシンガーソングライターが好きな、
しかし、身体が弱そうな社員さんがいて、
そのひとが買取で入ってきたこのレコードのことを
「これこれ、いいんだよ」と
興奮しながら教えてくれたのだった。


そのとき、この名前をスペイン語読みするのだということを知った。


でも、教えにしたがって高く値段をつけたら
結構売れ残ったんじゃなかったかな。


ときは80年代後半。
ソフトロックもシンガーソングライターも、
まだ中古屋の隅っこでホコリを被っていたころ。
Pファンクが我が物顔でレコ屋の壁を謳歌していたころ。


その社員さんは、そのうち本当に身体を壊して
故郷に帰ってしまった。


そのひとがいなかったら、
ハーパース・ビザール
エリック・カズを知るのが
もう少しあとになっていたかもしれないな。


だから、ぼくがこのレコードで思い出すのは
白いカーティスなんて架空のたとえではなく、
あの社員さんのリアルに青白い顔なのだった。(松永良平


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