Jean Terrell ジーン・テレル / I Had To Fall In Love
「ドリーム・ガールズ」を観に行こうと思っているのだが
なかなかタイミングが合わずにいる。
シュープリームスをモデルにしたミュージカルで
厳密に事実に則しているわけではないが、
ビヨンセがダイアナ・ロス風、
ジェニファー・ハドソンがフローレンス・バラード風と、
ポップス/ソウルのファンであればすぐに思い当たる役を演じている。
その「ドリーム・ガールズ」外伝の、
そのまた外伝というアルバムがこれ。
ジーン・テレルは、
ダイアナ・ロスが69年に独立したあと、
「ドリーム・ガールズ」な狂騒曲が落ち着いた時代に参加し、
リード・ヴォーカルを務めた女性。
ダイアナ・ロスほどチャーミングな個性は無いかもしれないけど、
歌がうまくて、さわやかなのに包容力がある。
しかし、彼女の代のシュープリームスからは
大ヒット曲は生まれなかった。
その時代のアルバムも、
今聴くと穏やかなレディソウルが味わえて悪くないのだが、
スター・グループという名前ばかりが目立って、
素直に聴いてもらえない。
ツアーではきっと
ダイアナ・ロス時代のヒット曲ばかり歌わされていただろう。
だが、シュープリームス解散後に彼女がリリースした
この唯一のソロ・アルバムは格別。
彼女はシュープリームスという名前からは
大きく飛び立つことが出来なかったが、
その重石の下でも折れなかった心を感じることができる。
ようやく手にした自分だけの歌。
冬を耐えて芽吹いた健気な花のようなアルバムで、
春になると聴きたくなるのだ。(松永良平)