V.A. / 1969 Warner-Reprise Record Show (2LPs)

Hi-Fi-Record2007-03-10

 松永クンが自身のブログでジミ・ヘンドリックスの「エレクトリック・レディ・ランド」の日本盤LPの曲順が、随分長いこと間違っていたという事実について触れている。



 「本来ならA→B→C→D面と進むべきところがA→D→B→C面の順で20年以上放置されていたという」と述べながら、「アメリカ盤の2枚組LPでは、1枚目にAD面、2枚目にBC面という構成がよくある」としている。
 実はこのアルバムもそうだ。
 1枚目のAB面を見ると、Side1とSide4と記され、2枚目の方にはSide2とSide3と記されている。
 それというのもアメリカのレコード・プレイヤーの多くに、オート・チェンジャーがついていた時代のレコードだからである。



 オート・チェンジャーは、複数のレコードを自動的に継続して演奏する装置だ。アームを動かして針を上げ、演奏を終えたレコードを、ターンテーブルからはずし、別の場所に移動する。レコードを移動した後には、また次の新しいレコードをターンテーブルに置く。そしてまたアームが動いて針を落とし、レコードの1曲目から再生する。
 2枚組のアルバムを聴く際にオートチェンジャーを活用すれば、Side1とSide2とを自動的に聞くことができるし、いまいちどレコードをセッティングすれば、こんどはSide3とSide4を一連の流れの中で聞くことが出来る。



 オート・チェンジャーは、78回転のSPの時代からあったそうだ。
 演奏を終えたレコードをまとめる際の取り扱いが乱雑で、結局のところ演奏後の移動中に相当数のSPレコードを割ってしまうことになる機種もあったという。これまたなかなかにせつない話だ。
 もちろん45回転シングル・レコードをオート・チェンジャーを用いて聞くことも出来る。




 話は飛ぶが、45回転シングルレコードの中心に空いている穴は、ジュークボックスのオート・チェンジャー機能に対応したもの。かつてのアメリカでジュークボックスは、ダイナーやバーなど娯楽施設には必ずといっていいほど設置されており、そこでのリクエスト回数がシングル・チャートに重要な影響を及ぼしていた。日本で言う有線のリクエスト回数とチャートの関係のようなものだ。シングル盤を一般に販売する際にも、この穴をそのまま残したカタチで製造販売された。



 こうしてみる人々は、音楽を継続的に聞くことに、思わぬ努力を傾注してきたのかも知れない。
 ラジカセ時代のカセットの選曲表、今ではiTunes Storeのセレブリティ・プレイリストなどもそうした楽しみとどこかでつながっているのだろう。



 本アルバムはワーナーとリプリーズの音源をひとまとめにダイジェストしているサンプラー・アルバムだ。なるほどコレを聞けば、1969年の同社の発売カタログの様子がわかるように作られているレコードなのだが、実は本来のそうした目的よりも、思いもかけないレア・トラックを収録していることでマニアに知られている。オリジナルには未収録の音源が、相当に集められている。なかでもヴァン・ダイク・パークス制作のCMが入っていることが目玉。
 どうしてこんな音源が入っているの?と思わされるのだが、そんなゆるさが楽しい。レーベル・サンプラー・レコードは、これだけじゃない。他にもまだまだある。実は知られざる秘宝なのだ。(大江田信)


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