New Christy Minstrels / New Kick!

Hi-Fi-Record2007-03-15

 いまや小学校の教科書にも載っているグリーン・グリーンのオリジネーター、ニュー・クリスティ・ミンストレルス。「グリーン グリーン/青空には 小鳥が歌い/グリーン グリーン/丘の上には/ララ 緑がもえる」と日本語でサビをすんなりと歌える人は、少なくともボクよりも若いひとですね。本家の英語版が流行ったのが、ぼくの中学くらいのことですから。



 それまでの彼らのギターやバンジョーを中心としたアコースティックなサウンドとはうってかわって、アルバムの冒頭からドラムのフィルで始まるエレクトリックなサウンド。そしてなんらかのカタチでメンバーが登場してきていたアルバム・カバーには、不思議なキャップをかぶり、手足を伸ばしながらポーズを取る女性と、これは彼らの新たな変化を物語る作品。



 アルバム制作の主導権はマネージメントのシッド・グリーフが握り、そこにリーダー、マイク・セトルとコーラス・アレンジにボブ・アルシヴァーが加わり現場を進行します。ボブ・アルシヴァーは、1950年代の末にジャズ・コーラス・グループ、シグネチュアーズを妻のルースと共に牽引したアーチストで、コーラスのアレンジに大変に才のあるところを見せてきました。後になってフィフスディメンションのアルバムなどでもコーラス・アレンジを手がけたことから、今ではソフト・ロックやポップ・コーラス・ファンから大きな注目を集めているアーチストですね。ボブの名前はアレンジとディレクションを担当したとして、アルバムにしっかりとクレジットされています。



 マイク・セトルは、マネージメント側と、若いメンバー側と間に立って苦労したようです。メンバーにはマネージメントの受けは良くなく、彼らはかろうじてマイクの元に集っているという風。アレンジのボブ・アルシヴァーはマネージメント側が用意したスタッフだったので当初はメンバーとの距離があったようですが、レコーディングが進み始めると、メンバーはボブの非凡な才能に気づきます。やがてメンバーはボブの才能を信じ、ときとして素晴らしい歌唱を収録の楽曲に残したとマイク・セトルはコメントしています。



 結果としてこのアルバムは、ボブ・アルシヴァーの素晴らしい才能を刻印した作品となりました。
 コーラス・アルバムというのは、ときどき思っても見ないスタッフの出会いから生まれた化学変化を収めていることがあります。ニュー・クリスティ・ミンストレルスをフォークのグループだからとしておくと、こういうポップな楽しみに出会うことが出来ません。ライムライターズやハイウェイメンなど、フォーク・グループの思いがけないポップなコーラス・アルバムって、まだまだありますよ。(大江田信)


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