Tom Jones トム・ジョーンズ / Green, Green Grass Of Home
ジョニー・キャッシュの「アット・フォルサム・プリズン」を聞く。1968年にフォルサム刑務所で行われたライヴを収録したアルバムだ。
死刑囚が絞首刑を受ける最後の25分間を描いた「あと25分」や、炭鉱労働者の日常を描いた「地下牢のように暗く」など、これが刑務所で歌われて良いのだろうかと思う歌も収録されている。「思い出のグリーン・グラス」(「Green Green Grass Of Home」)を聞いたときにも、背筋がゾクッとした。
懐かしい故郷に帰っていく自分を描くところから、歌が始まる。父と母に会う。古い自宅はまだ健在だ。今も美しいメアリーと道筋を歩く。
幸せを描く歌詞が続いていくと、最後にそれが一夜の夢に過ぎなかったことが証される。
目を覚ますと監獄の壁に囲まれている自分に気づき、そして刑に処される主人公が、示唆的に描かれる。
これをジョニー・キャッシュが堂々と歌う。舞台は監獄。囚人たちが何を感じながら、キャッシュの歌声を聞いていたのだろうか。いかにも想像するしかないのだが、少なくともぼくはキャッシュの発する大いなるアウトロー的父性に酔いながら、その声に浸っている。
日本で「思い出のグリーングラス」と言えば、トム・ジョーンズの当たり歌だ。
トムの生まれ育った周囲の環境には、カントリー・ソングがあったと聞いたことがある。アイルランド紛争によって収監された政治犯を巡る記憶が、イギリス圏におけるこの歌の受け止められ方に潜んでいるのではないか、と指摘する人もいる。
作者はアメリカ、アラバマ州生まれのカーリー・プットマン。1965年に著作権登録されている。
「思い出のグリーングラス」をめぐる様々で、一冊の本が書かれても良いのではないかと思う。まさか、そういう本がもう既にあったりするのだろうか。だとしたら、ぜひ読みたい。(大江田信)