John Herald And John Herald Band / John Herald And John Herald B

Hi-Fi-Record2007-03-22

 このアルバムに「Happy Sunny SIde Of Life」という曲が収録されている。単に「Sunny Side Of Life」としても知られているこの曲、もともとは1930年代に大スターだったカーター・ファミリーのレパートリー。
 いわば人生の明るい側面を生きていこうと推奨する歌だ。音楽の全体の仕組みがゴスペルのコール&レスポンス風というか、白人聖歌的な組み立てになっていることから、おそらく背景に素朴なキリスト教信仰を持つ歌なのだろう。



 カーター・ファミリーのレパートリーには、アメリカ東部のアパラチアン山脈界隈に伝わる白人系伝承民謡を、彼らなりにカタチを整えて発表しているものがあると想像される。著作権者としてA. P. カーターの名前がクレジットされることもあり、おそらくすでに親しんでいた歌詞やメロディを整えたうえで、レコードを吹き込むに際して著作権登録をしたのではないかと思う。



 さて、この「陽の当たる人生」。ポイントはひとつ。
 既に「陽の当たる人生」を歩いている人は、こういう歌を歌わない。そういう人は、必要としない。
 この歌が必要なのは、人生のやるせない鬱屈を背負っている貧しい人たちだ。負けちゃいけないな、がんばらなくちゃという思いが、「陽の当たる人生」を歌わせる。それが歌というものではないか、と思う。
 事実、アパラチアン地方は、決して豊かな地域ではなかった。
 それがぼくにはとても興味深い。(大江田信)


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