Merle Travis マール・トラヴィス / The Merle Travis Guitar

Hi-Fi-Record2007-03-24

 ギターの奏法のひとつ、スリー・フィンガー・ピッキングは誰でも同じように演奏しているように見えて、実は人によって少しずつ違いがあるもの。クセがあるというか、美意識が違うというか。ルート音のミュート、コードの握りの好み、音色の明るさなど、ちょっと聴いただけでは解らないことが、長く繰り返し聴いているうちに、ハハーン、この人はこういうのが好きなのかと解ってくるものだ。



 マール・トラヴィスの演奏を聴いていると、抜群に良く動く右手に耳が行く。よく指が絡まってしまわないモノだと思うほどだ。ウエスタン・スイングのミュージシャンとの交流もあったようだし、ブルージィなジャズ風味がうまく混ざっているのも、彼のギターの隠し味になっている。



 聴いているうちに、ふと左手のギターの握り方の妙味が生かされていることに気付く。ハイ・ポジションの握りを生かしながら、音の微妙な連なりを効果的に表現してメロディを構築しているのは、たとえば本アルバム収録の「Blue Smoke」。絶妙に歌心を響かせるマール・トラヴィスの技に、ハッと気付かされる。(大江田信)




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