V.A. / Spin Time WIth Liberty
これ、リバティ・レコードの1963年1月新譜を紹介するプロモーション盤。
A面とB面、それぞれに同一アーチストの最新アルバムからの曲が1曲つづ順番にピックアップされ、収録されている。シングルではなくてアルバムをプロモーションしている。このアルバム宣伝レコードというところが、63年の時点を考えるとややススんだ発想だろう。
宣伝部長のビル・スカッフが、ジャケ裏に挨拶を記している。たぶんラジオ局のレコード室(放送局にはレコード室とよばれる保管、整理室があり、そこにはたいていレコードに恐ろしく詳しい人が常駐していた)のうるさ方向けの気を惹こうという意図なのだろう、その上には、「ご注意!レコード司書様!」と書かれている。
レコード会社の新譜プロモーション・レコードといのは、それほど珍しい存在ではない。それぞれに様々な工夫が盛り込まれているところが楽しいから、つい手に取ってしまう。
ただしこのアルバムの趣向は、初めて見た。当時のリバティ・レコードのプロモーション部隊の面々が、ジャケットに写っているのだ。それぞれの写真の下に、名前が記されている。部長のビルは、手前の右下に座ってやや上目遣いでこちらを見ている。
名刺代わりにレコードを作っちゃったって感じなのだ。しかもLPレコードを。この発想は、斬新だ。
誰もがダークでスマートなスーツ姿で写真に収まるなか、一人で千鳥格子のジャケットを着てにこやかに微笑んでいる男性がいる。誰あろう、彼はトミー・リピューマなのだった。
現在はヴァーヴ・ミュージック・グループの会長で、これまでにジョージ・ベンソン、マイルス・デイヴィスなど、最近ではダイアナ・クラールを手がけるアメリカ音楽界のドンの一人だ。彼のビジネス・キャリアのスタートは、リバティ・レコードのプロモーターだったのかと、ちょっと驚いた。
もちろん、このレコードはこうして日本に連れて帰ってきたのだった。(大江田信)