Bud Dashiell バッド・ダッシェル / I Think It’s Gonna Rain Today
バッド・ダッシェルは50年代末から活動を始めていたフォーク・デュオ、バッド&トラヴィスのひとり。デュオ解散後にカーソン・パークス(ヴァン・ダイク・パークスのお兄さん。フランク・シナトラとナンシー・シナトラ親子のヒット「恋の一言」の作者。作者版「恋の〜」もとってもいいので是非)が在籍していたフォーク・グループのリーダーを経て、ソロになった。
伝統主義者的なフォーク・シンガーではなくて、この時代のポップスとしてフォークを採り上げていた人で、その軽い語り口がいい。ロッド・マッケンによく似ている。雨上がりの街のようなさわやかさがあり、青春の残り香が匂う。
彼の最高傑作。ガットギターのアンサンブルをバックにして、ランディ・ニューマンのアルバム・タイトル曲の他に、ペギー・リーで知られる「ブラック・コーヒー」や、ゴードン・ライトフットの「朝の雨」などを採り上げている。ダークに風景を染めていく、その声が耳に残る。どこか捨て鉢で虚無的な後味がいい。
ちなみにロッド・マッケンが詩を書いた「そよ風のバラード(Seasons In The Sun)」も、採り上げている。
テリー・ジャックスの歌唱で全米1位の大ヒットを記録したこの曲、もともとはフランスのジャック・ブレルの作品だ。ロッド・マッケンの作品を熱心に採り上げていたキングストン・トリオのヴァージョンもいいし、ニルヴァーナも採り上げているが、このバッド・ダッシェルのヴァージョンが秀逸。これに勝る歌唱はない。
バッド・ダッシェル、ロッド・マッケン、そしてジャック・ブレル。
この3人をつなぐ赤い糸があるような気がし始めた。(大江田信)